このページは産婦人科医療に関する話題を紹介するものです。

妊娠が分かりました。おなかの赤ちゃんのために、
特にどんな栄養素が必要ですか。


妊娠中に食べてはいけないものはありますか。
食事の注意点なども教えて下さい。


もともと食が細い上、おなかが大きくなって食事作りも面倒になっています。
赤ちゃんに影響はあるでしょうか


後期に妊娠高血圧症候群と便秘を解消する、
食事の工夫や注意点を教えてください。


アレルギー体質の家系ですが、遺伝を防ぐために、
食事で気を付けることはありますか


母乳育児をめざしています。
母乳にとってよい食事、避けたいものを教えてください。



A.エネルギーはあまり増やさず鉄分と葉酸をたっぷり
栄養が行き渡っている現代では、妊娠初期に必要なエネルギー量は、プラス50キロカロリー、中期でもご飯一杯分ほどのプラス250キロカロリーですから、食べ過ぎは禁物。量より質が問われます。特に鉄分は胎児の成長や出産による損失を考慮し、普段の3倍必要。レバー・アサリ・ひじき・小松菜などに多く含まれており、ビタミンCと一緒に取ると吸収率が飛躍的に高まります。逆に緑茶などに含まれているタンニンは吸収を大幅に阻害するので、食後1時間ほどあけて飲みましょう。以前は鉄分とともに妊娠中の2大栄養素と言われていたカルシウムですが、今春改訂された食事摂取基準では付加量はありません。ただし足りない人も多いので、牛乳1杯、チーズ1かけぐらいを増やすとよいでしょう。緑黄色野菜などに含まれている葉酸不足は、神経や脳の発達障害を起こすので、普段の2倍摂取を。


A.同じものを食べ続けないこと、添加物や清涼飲料水は控えて
妊娠したからといって、特に食べてはいけないものはありませんが、食品選択には気を付けましょう。まず、同じ食品を食べ続けないこと。特にアレルギーを引き起こしやすいタンパク源の食物を毎日変えることが大切です。食品添加物にも注意しましょう。それぞれの食品への添加物は基準値内でも、合計すると年間では相当量を摂取することになります。なかでも着色料や防腐剤は要チェック。漬物やタラコなど、本来の色と違うものは気をつけ、添加物を用いるインスタント食品、加工食品、調理済食品、スナック菓子などは、過酸化脂質を控えるためにも、できるだけ避けましょう。清涼飲料水もほとんど砂糖水といっていいほど糖分が多く、リンゴジュースなども1缶に生のりんご2個分もの果糖が含まれているため、飲み過ぎは禁物。アルコールやたばこは、もちろん禁物です。


A.低栄養は母子に悪影響。バランスのよい定食メニューを。
最近の若い女性の3割がBMI18・5以下とやせすぎで、妊娠しても体型維持の為にと無理な食事制限を続け、サラダばかり食べている人が増えています。しかしママの低栄養状態は、赤ちゃんの発育不全・障害を引き起こし、早流産を促し、分娩時にも陣痛が起こらず、生まれてきた赤ちゃんも低体重や生活力が低下気味など、母子に多くの悪影響を与えます。妊娠中には栄養に十分配慮し、さまざまな栄養素をバランスよく取る必要があります。エネルギー源を減らすとビタミン類なども取れなくなるため、ご飯など主食を50%、魚・肉など主菜20%、煮物やサラダなど副菜25%、そのほか汁物、果物5%を目安にメニューを組みましょう。料理するのがつらいときは、外食やお総菜を買うのもよいですが、そのようなときも、前述の定食メニューになるよう心がけましょう。


A.だしや酸味を効かせて塩分を控え、食物繊維は穀物からも摂取
妊娠中毒症はタンパク尿、浮揚、高血圧の3つで判定しますが、なかでも高血圧が主原因で起こるため、今春から妊娠高血圧症候群と名称が変わりました。その予防には塩分を減らし、肥満を防ぐことが何より大切です。塩分カットには酢や香辛料、だしを上手に使うとよいのですが、粉末だしや固形コンソメは4割が塩分なので、できるだけ昆布、カツオ節などを用いてだしをとりましょう。エネルギーの付加量は後期といえども500キロカロリーでOK。ご飯ではなく脂肪分などで増やす人が多いですが、ご飯は良質のタンパク質も含まれた栄養バランスの優れた食品。朝食、ご飯を一膳ずつ増やせば、ちょうど良い量です。また便秘解消に有用な食物繊維は、野菜だけでは取りにくいもの。精白米に押し麦を1割加えたり、全粒パン、ライ麦パンなど穀物からも取りましょう。


A.妊娠8ヵ月から分娩後8ヵ月まで、アレルギーを起こす食物は控えて
アレルギーの原因の一つに遺伝的な要因があげられ、両親または片親にアレルギーがある場合、子どもの70%に発現するといわれています。しかし食生活次第である程度は防止できます。そのためには妊娠8ヵ月から分娩後8ヵ月までの摂取食品に、特に注意が必要です。まずアレルギーを引き起こす食材に気をつけ、同じ材料や食品を繰り返し食べないようにして、体に同じ刺激を与えないようにします。アレルギーを起こしやすいといわれる肉、牛乳、卵、大豆、小麦の過剰摂取は避け、魚を食べるように心がけましょう。またタンパク質は加熱したり酢を加えて、分子の結合を壊したり弱めると、アレルギー反応が出にくくなるので、調理法の工夫を。なお、アレルゲンの吸収を阻止する免疫グロブリンIgAは母乳から赤ちゃんに与えられるので、できるだけ長期間、母乳を与えましょう。


A.水分の多い具だくさんの汁物を。糖分・油分は減らし気味に
母乳は赤ちゃんを感染から守り、授乳のスキンシップは母子の絆を深め、乳汁分泌ホルモン「オキシトシン」はママの回復を早めます。健康面・精神面ともにメリットの多い母乳ですから、できれば半年から7、8ヵ月まではあげたいもの。その母乳によい食事は、水分が多く栄養バランスのよい、具だくさんのみそ汁やシチュー、雑煮など。糖分や油分の多いものは母乳をべとつかせ、食べ過ぎは乳腺を詰まらせるので避けましょう。刺激物やカフェイン、アルコール、たばこは、母乳にストレートに影響するのでよくありません。また最近は3ヵ月頃から離乳食を始めるママもいますが、赤ちゃんの消化力が十分でないので、アレルギーを起こしやすくなります。離乳食は5ヵ月から母乳と平行してはじめ、最初は卵の白身や牛乳など、アレルギーを起こしやすいものは避けます。